DTPの勉強部屋 第36回勉強会 まとめ

DTPの勉強部屋の勉強会、いつもメモは取ってるけどまとめてはいなかったので書いてみました。

Session 1:文字組版をもうちょっと考える

スピーカー:丸山 邦朋 氏ものかの)※ 以下ものかのさん

なんでこういうふうに組むの?なんで日本語は全角なの?という文字と文字を並べることについてのお話です。
こういうふうに組むのですよ!的なテクニック論ではありません。

文字組版の役割は2つとして、言葉を表現する媒体としての役割と、均一な品質を提供する工業製品としての役割を提示されました。
この相反するものとどう折り合いをつけるのか。

工業製品としての日本語組版は、明治初期に日本語の活字印刷が成立したところからはじまります。
正方形の形に合わせた文字の形の変化、その正方形となった文字「活字」をぴったり並べることで、均一な品質の「工業製品としての印刷物」を作ることができるようになりました。

この文字を並べることは、DTP時代になるまでは、専門の職人が行っていました。

DTP時代になって、誰でも文字を並べることができるようになりました。
でも、アプリケーションの機能を使って、「ただなんとなく並べる」だけです。

どういったときに、どういうふうに文字を並べる、組むのがいいのかは、よくわからないまま、なんとなくそれなりに文字が並んでいるものが作られるようになります。

機械がうまいとこ全部やってくれる、という人もいます。
文字の見た目、文字の並びなんて文章がちゃんとしてればどうでもいいや、という人もいます。(読めればいいんだよ派)

しかし、文字組版の役割、言葉を扱うこと、工業製品としての品質、その両方を満たせるほどまだ機械は賢くなっていません。

工業製品としての文字組版

アプリケーションでできるのはただ命令(指定)に従って、「文字を並べるだけ」です。
指定の仕方によっては、1行ごとに文字間のアキがバラバラのものなど、工業製品としての品質を保ててないようなものも作れてしまいます。
この指定の仕方を全て規格化して、機械が全部完璧こなせるようにしよう、と考えたのがJIS規格の文字組版。
しかし、言葉の世界は深く広いので、全てを体系化することはできません。

言葉としての文字組版

文字は読み手が認識して初めて言葉としての機能を果たします。
人がいて、やっと何かを伝えることができるのです。

人が文字を見て、認識するときに、伝える内容に齟齬が出ないようにするために、文字を並べることに気を使うのが文字組版の役目です。

「文字組版は、それぞれの言葉に応じた適切なコンテキストを与えること」ということをおっしゃってました。

感想

文字の歴史、活字の並び方やデジタルフォントの構成などもっと盛りだくさんの内容だったのですが、うまくまとめきれなかったので省略しています。
人工知能が発達して、人の認識に近づいていったら、文字組版も人がいなくても自動化できるのかな、と未来のことを考えたりもしました。そうすると、人工知能が文章を書くことになるんだろうな、とも。人いらないんじゃ。

Session 2:クライアントから本当のニーズを引き出す4つの質問と、サービスとホスピタリティーの違いについて。

スピーカー:矢野 まさつぐ 氏株式会社レンズアソシエイツ 代表取締役/クリエイティブディレクター )

とてもかっちょいい制作事例の数々を画面に流しながらセッション開始です。

デザイン=サービス業、として世間一般では捉えられているけれど、ちょっと違うのではないかなというところから。

サービスとホスピタリティの違いについて

サービスは、提供側が何ができて何ができないかを決めています。
メニュー化することで、効率性を求めます。

ホスピタリティは、受け手が何をして欲しいかというので決まります。
受け手のの満足性を求めます。

受け手に合わせてその都度対応、なんて全ての事柄ではやってられません。
しかし、効率ばかりを追求してきたことで、受け手の満足をおろそかにしてきたのではないでしょうか。

デザインでは、サービス的なこともやりつつ、少しずつホスピタリティに重点を置くようにしていく必要があるのではないでしょうか。

ヒアリングのテクニック

受け手(お客さん)のことをよく知らないと、ホスピタリティが高いものを提供できません。

そこで、矢野さんがお客さんのヒアリングで使っている「クリエイティブブリーフ」というシートを紹介されました。

1枚のシートにお客さんに問いかける4つの質問項目(プラス1項目)が書かれています。
この4つの質問順にお客さんに問いかけていくそうです。

1. 現在の立ち位置

お客さんが周りの人にどう思われているか。
業界・地域・会社の中でどういうポジションにいるのか。
いろんな角度から教えてもらう。

2. あるべき立ち位置

目標となるゴール。
ターゲットにどう思ってもらい、どう行動してもらいたいか。
売り上げ10億にしたい・シェア率を伸ばしたい、という目先・仮の目標のその先に、何を目指しているのか。
表向きのゴールの先の、本当のゴールを話してもらう。ゆくゆくはどうしたいのか。

3. モノの相

会社で扱っているモノの強みは?他社との違いは?
特にないというところでも、会社の雰囲気がすごくいい、というところもある。
数字には上がってこない、商品に直接繋がらなくても、影響のあるものがある。

4. ヒトの相

ターゲットは誰なのか。
例えば、20代の女性です、だけだと幅広すぎる。
どんなライフスタイルの人に届けたいのか、というのを具体化する。
朝食は取るのか、美容院に行くの頻度は、どういうお店で服を買うか…などなど。
「こういう気持ちを大事にしている人」をターゲットにする。

質問をしていくことで、「この人なら自分からいろんなことを引き出してくれる、わかってくれる」と感じてもらえるようになります。

そして、この1~4の質問は、下記のようにスタートとゴールがあります。

「1.現在の立ち位置」から「2.あるべき立ち位置」へ
「3 モノの相」から「4 ヒトの相」へ

この、スタートからゴールにいくために、最後の項目があります。

5. 出会いの相

モノとヒトがどういうふうに出会えば、目標を達成できるかを一緒に考える。

頼まれていたのがA4チラシ1枚だったとしても、でも、この4つの質問を投げかけることで、A4チラシの先にあるゴールが見えてきます。
いきなりゴールを目指すのは無理でも、最初の一歩としてのA4チラシを作って、その先に一緒に歩いていけるように。

1~5の項目の他に余裕があれば6、そして7(これは必須)も聞いておきましょう。

6. 業界の環境・経済状況

お客さんから業界の状況を教えてもらう。
お客さんの方が詳しいので、徹底的に聞いて勉強をする。

7.具体的な提供物(&スケジュール)

何をいつまでに作るか。
スケジュールは大事。物理的に無理なこともある。

このクリエイティブシートが必ず必要というわけではなく、何をどういう順番で聞けば、お客さんから本当のニーズが聞きだせるか頭に入れておくのが大事です。

デザイナーの仕事はモノができて終わりではありません。
納品してからが、スタート地点。
クライアントとデザイナーのスタート地点を揃えて、ゴールを目指す。

感想

こちらのセッションもたいへん内容が濃くて全部はまとめきれません。最後の質問時間も、働いてる人なら思うであろういろんな悩みに答えるかたちでとてもためになりました。(メモしきれませんでしたが)
質問のお答えの中で、印象深かったのが「クライアント全ての会社を経営しているような気持ちで生活する」という言葉でした。

2つのセッションの感想まとめ

2つのセッションを聞いて、ものかのさんは文字組版という制作に近いもの、矢野さんはクライアントとのかかわりという全体のものという、レイヤーが違う話なのですが、おふたりとも根底にあるものは似ているな、と感じました。

工業製品としての文字組版とデザインのメニュー化、言葉としての文字組版とデザインのオートクチュール。

効率を求めることと、最適なものを提供するということ。

仕事はどちらも必要です。
どちらかにかたむきすぎてもやっていけません。

しかし、どちらも「手を抜く」と目指していたゴールにはたどり着けません。
相手のことをよく知って、よく調べ、よく考え、そして思いやることこそ、よいモノやサービスが提供できるのだと思いました。

※プチセッションの感想ははしょりました…時間が…。